透析導入について Vol.1

― 透析を専門とする賀茂病院

   常日頃から透析に携わっている職員より、「透析」について順番に連載を始めていきます

 

今回は、賀茂病院・藤澤理事長へのインタビューです

 

透析を導入する指標(基準)はどのようなものがあるのでしょうか

 

透析を導入する基準には、いくつかの重要な指標があります。

 

一般的に、クレアチニンクリアランスを基準にすることが多いです。

 

クレアチニンクリアランスは、血清クレアチニンの値、年齢、体重をもとに算出され、おおよその値を計算することができます。

 

この計算式に基づいて、クレアチニンクリアランスが10を切ると透析が考慮されます。また、透析導入の基準は年齢や性別によっても異なります。

 

通常は血清クレアチニン値が8.0以上が目安。

 

だけれども、例えば、高齢者の場合、腎機能が低下しやすいため透析を開始するタイミングが早まることがあります。

 

性別によっても計算式が異なり、女性の場合は男性の0.85倍を掛けることが一般的です。

 

さらに、体重が少ない人ほど透析を早期に始めることがあると言われています。

 

これは、体重が少ないとクレアチニンクリアランスの数値が早く10未満になりやすいためなのです。

 

透析導入の判断においては、尿蛋白の量も重要な指標となります。

 

特にネフローゼ症候群のように尿蛋白が大量に失われる状態では、腎機能が深刻に低下しており、透析によってその症状を改善することが求められます。

 

尿蛋白が多く出続ける場合、おしっこを止めるために透析が必要になるのです。

 

このように、透析の導入は複数の要素を総合的にデータ評価して決定していきます。

 

 

透析導入を拒否される場合や、不安を抱えている患者さんに対してどのようにアプローチされていますか

 

透析を拒否する患者さんには、まずその意向を尊重しつつ、透析に関する説明を行うようにしています。

 

拒否された場合、その人の意思を無理に変えることはできませんが、意識がなくなった場合には透析を行いますよと言う。

 

そして透析の重要性や効果について話します。

 

透析を受けることで体が楽になることを説明し、理解を促すことがポイントです。

 

透析に対して否定的な考えを持つ人が多いことも事実なんですね。

 

透析の治療を一度始めるとずっと続けなければならない、しんどいという考えが根強くあります。どうなるかわからない不安がある。

 

しかし、過去に尿毒症が不治の病とされていた時代と比べ、現在は透析によって命を救えるようになったことを説明することが大切です。

 

患者さんに対して、透析を受けることでどれだけ生活の質が改善されるかを伝え、拒否の理由を理解しつつ、納得してもらえるように話を進めていきます。

 

これから透析治療を受ける患者さんに医師として伝えたいことや励ましの言葉はありますか

 

自分の体を大切にし、治療をしっかり守ることが大切です。

 

無理をすると体に負担がかかりますが、治療を続けることで長生きができます。

 

透析を始めても、旅行や仕事など、一般的な生活を楽しむことは可能なんです。

 

透析を受けることで、生活がより充実し、人生を楽しむことができるので、安心して一緒に治療に取り組みましょう。